2018/1/24【長時間労働とうつ病】
長時間労働に起因する過労死として,脳・心臓疾患による突然死の話し(本HP:「長時間労働と脳・心臓疾患」参照)をしましたが,長時間労働に起因してうつ病を発症し,そのため自殺してしまう事例も増えており,こうした事例もご家族にとっては突然死そのものであると思われます。
うつ病のような精神障害は,環境由来の心理的負荷(ストレス)により発症すると考えられますが,長時間労働も上記ストレスの一つとなります。業務に起因して精神障害を発症した場合は労働災害となりますが,この判断が難しく,労災認定の審査に時間が掛かっていました。このため,厚生労働省は,労災認定審査の迅速化と基準の明確化を目的として,平成23年に「心理的負荷による精神障害の認定基準」を定めました。
この認定基準によれば,認定要件として次のいずれの要件も満たす対象疾病(うつ病も対象疾病に含まれます)は,「業務上の対象疾病」として扱うと定められています。すなわち,
- 対象疾病を発病していること。
- 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に,業務による強い心理的負荷が認められること。(下線筆者)
- 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと。
となっています。そして,上記強い心理的負荷となる時間外労働時間数の例として,
① 発症直前に連続した2か月間に,1月当たり約120時間以上
② 発症直前に連続した3か月間に,1月当たり約100時間以上
③ 心理的負荷強度「中」の出来事の後に,月100時間程度
などが,定められています。
長時間労働などで自殺した方の中には,うつ病を発症していた方がかなり含まれていると考えられます。うつ病は,程度がひどい場合は周囲が気づくことができますが,そこまででない場合は,家族でも気づかなかったということがよくあります。そして,うつ病は,程度がひどい場合よりも,そこまででない場合の方が自殺を行う可能性が高くなります。程度がひどい場合は,自殺さえする気力が無くなってしまうためです。
経営者としては,高額の損害賠償請求を避けるためにも,上記のようなリスクを十分認識して,労務管理を行う必要があります。また,真面目な人ほど仕事を抱え込んでうつ病を発症してしまう傾向がありますから,そのような方は早く周囲にSOSを出すことが必要です。カウンセリングの利用も有効で,あまり考えずに気軽に受けるようにしたらよいと思います。
(沼田)