2018/2/15【女子生徒の黒髪強制について】
生まれつき茶色の髪を黒く染めるように指導され、精神的苦痛を受けたとして、大阪の女子生徒が府に損害賠償を求めた訴訟があり、新聞やインターネット上で話題になっています。(読売新聞(夕刊)2017年12月16日 引用)
争いがありますが、髪の色を自由に決める権利は、自己決定権(自分の意思に基づいて服装やライフスタイルを決める権利)の一内容であり、憲法13条の幸福追求権として、憲法上保障されていると考えることができます。
しかし、女子生徒は未成年者であり、精神的に未熟ですから、その心身の健全な発達のため、学校からの規制も、ある程度は許されるとも考えられます。飲酒喫煙が成年に認められ、未成年者には禁止されることと同じ考えです。
また、非行に走ることを防止したり、オシャレに気を付かるあまり学業をおろそかにしないようにするため、茶髪を禁止するとの学校側の規制には、世間からも一定程度の理解が得られると思います。
さらに、学校規則で禁止されているパーマをかけ続けたことを理由に、学校が退学処分をしたというケースにおいて、最高裁は、退学処分は合憲で、許されると判断を示したこともあります。
もっとも、今回のケースで最も問題になることは、女子生徒が生まれつき茶色だったという点にあります。生まれつき茶色であるため、女子生徒には、あえて規則を破るつもりも、オシャレに気をとられ学業をおろそかにするつもりもなかったでしょう。また、自毛の色を変えることは、個人の意志や努力では左右しうる性質でもありません。
たしかに、たとえ自毛が茶色だったとしても、茶髪の生徒が学校に存在することで、外部の人からすれば、あの学校には茶髪の生徒がいるとの悪い印象を与えるかもしれません。また他の生徒から、「自分も茶髪にしたい」との不満が出るかもしれません。とすると黒染めを強要することは正当な目的かもしれません。
しかし、女子生徒は黒染めを繰り返したため、頭皮が荒れる、身体的な特徴を否定されたことで精神的苦痛を受けたと主張しています。自毛が黒色の生徒が茶髪を禁止される苦痛と、自毛が茶髪の生徒が黒髪を強制される苦痛とでは、後者の方が苦痛の程度・性質が強度で深刻だといえるでしょう。
茶髪による上記弊害を考慮しても、女子生徒にこのような身体的・精神的苦痛を与えることは正当化されるとは言い難いのではないでしょうか。
(戸本)