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パラリーガルの卵

『パラリーガルって何?』 10/05 No.1

はじめまして、遙みさきと申します。

近頃、TVドラマや書物等で、パラリーガルという肩書きを聞くことが多いですね。

法学部を卒業した方がパラリーガルになりたいです!と言って面接に挑んで来られることも最近多くなりました。

しかし、パラリーガルという公的肩書き、あるいは資格は、現在の日本では認められていません。何年も前から、法律事務所の職員に確固たる称号を与えようと、弁護士や学者の方々が提言し、日弁連(日本弁護士連合会)弁護士業務改革委員会のパラリーガルプロジェクトチームが日弁連会長に答申書を提出しましたが、成立はかなり困難なようで、先般の答申案では、パラリーガルという名称すら認められず、弁護士補助職に変更を余儀なくされました。

あれ?じゃあなんで遙みさきはパラリーガルの肩書きを使ってるの?と思いますよね。

先にも述べたとおり、現在パラリーガルという言葉が一人歩きしています。

以前は、パラリーガルの資格確立賛成派も、勤務年数、試験、面接や研修を行い、称号取得を狭き門にし、その職種の崇高さを保持したものを確立しようとしていました。

しかし、現在の答申は、法律事務所に就職し、就業先の弁護士が責任を持って許可すれば誰でもすぐにパラリーガルになれるのでは?というような安易なものに変わってしまったような気がしています。とても残念なことです。

私としては、パラリーガルという名前であろうとなかろうと、法律事務所に勤務することの大変さや面白さを、我が事務所の新人を含め、法律事務所に勤務したいと思っている方々に是非知ってもらいたいと考えています。

また、パラリーガルって何?と聞かれることが多くなったので、法律事務所に勤務する者の責務から、きちんとお答えしておかなければとも思いました。

現時点では、パラリーガル=法律事務所職員と認識していれば十分だと思います。ただ、私見としては、ある程度の法律知識と勤務経験を持ち、法律事務所の職員としての倫理を持ち合わせた人物であればいいなと願っています。

もし、自分がクライアントであったなら、やはり、そういう人に担当になってもらいたいですからね。

『パラリーガルは透明人間!?』 11/01 No.2

1 例えば貴方が大企業に就職したとしましょう。

どの位の頻度で自分が就職した会社の「代表取締役社長」という肩書きを持った方に会えると思いますか?また、他の企業の「代表取締役社長」には?

秘書課に配属されない限り、毎日会うのは困難でしょうし、もしかしたら、一生話をすることはないかもしれません。

しかし、法律事務所に勤務すると、毎日社長(弁護士)から指示があり、大中小さまざまな会社の代表取締役社長等の肩書きを持った方ともお会いします。パラリーガル=弁護士補助職員は、受付から各部署を経由して秘書課に至るまでの全ての仕事を行います。パラリーガル程オールマイティーに仕事をこなさなければならない職業は少ないのではないかと思います。

弁護士が専門分野を1つと決めていたとしても、その仕事を的確、迅速にこなすこと自体大変ですが、特に地方都市の弁護士は、その需要から、原則どんな仕事でもこなさなくてはなりません。破産、個人再生、任意整理等の債務整理や交通事故の依頼はあたりまえ、離婚、医療関係、土地の境界、不動産の明け渡し等の民事事件。覚せい剤に窃盗、暴行等の刑事事件の弁護から先物等の商取引における紛争等々、弁護士は、本当に地獄の日々を送っています。そして、私たちパラリーガルは、そのような過酷な状況にある弁護士の指揮・命令の下、弁護士の補助の仕事をしているのです。

2 さて、このような仕事をしていますと、人間というものは怖いもので、なんだか自分が全てを行っている気になるようです。

担当という肩書きを与えられ、弁護士から指示を仰ぎ、弁護士の意向を伝えているのですが、依頼者と直接話しをしているのは自分。弁護士が不在であってもメールや電話で弁護士に確認をして、依頼者に弁護士からの指示を伝えているだけなのですが、自分が指示したことに依頼者が直接自分に答えてくるという錯覚に陥るのかもしれません。もちろん、きまりきったことは弁護士に確認をしなくても伝えなければなりません。そうこうしていると、依頼者は裁判所での仕事や出張で不在がちな弁護士よりも、いつも事務所に居る担当者宛に電話をかけてこられるようになります。

依頼者は殆どが自分より年上で、自分の両親やそれ以上の年齢であり、普通では会えないような肩書きを持った方々も含まれ、そのような方々から笑顔で頭を下げられる・・このような状況が続くと、自分が弁護士とまでは行きませんが、弁護士にほど近い立場になったような錯覚に陥るようです。錯覚に陥ったパラリーガルは勝手な言動をし始め、不審に思った依頼者から弁護士宛に確認の電話が入ります。そのパラリーガルは、弁護士が急いで欲しい仕事を後回しにし、自分が急ぐと思った仕事を先にしてしまい、結局間に合わないため、本当に急ぐ仕事を弁護士がしなければならなくなります。このような勘違いをするようになったパラリーガルの天狗の鼻を折るのに、本当に苦労します。

3 パラリーガルの仕事に、主観はありません。1つの事件に対して依頼者と弁護士の方針が決まったら、弁護士から仕事の指針を示されます。弁護士の意向を読み取り、その指針に向って仕事を遂行しなければなりません。

法的思考を駆使し、仕事を行っているのは弁護士です。私たちではありません。例えば電話を受けるのも、本来は弁護士が受けるものですが、忙しいから弁護士が自分の代わりに人を雇用して電話を取ってもらおう・・として雇用されたのが私たちパラリーガルです。ですから、その内容も、弁護士の意向に沿ったものでなければなりません。

事件の係属中や終了後に挨拶に来られる様々な方々が、私たちの前で深々と頭を下げられます。しかし、それは私たちにではなく、私たちの後ろにいる弁護士に頭を下げているのです。パラリーガルはある時は透明人間。あるときは媒体になるのだと思ってください。

電話や受付、接客で横柄な態度をとっていませんか?法律事務所で横柄な態度を取れるのは、弁護士と依頼者だけです。

『スランプかな?』 12/01 No.3

今、一生懸命に頑張っているのに、弁護士になかなか認めてもらえないと思っていませんか?

そんなときは、貴方の頑張りが、どの方向を目指しているのかを冷静に考えてみてください。

私たちパラリーガルは、弁護士の手足として雇用されています。弁護士に手足が何本もあれば、多分その事務所にパラリーガルは不要です。

パラリーガルの仕事を絵を描くことに例えてみましょう。

弁護士から「山を描いて」と指示されます。弁護士の意向を即座に読み取ることができるパラリーガルは、弁護士だったらこのような山を描くのではないかと考えて、2、3の質問をして山を描き始めます。

しかし、弁護士の意向を読み取ることが出来ないパラリーガルは、一つ一つ質問をしてしまいます。形は?色は?時間帯は?風景は?季節は等々。

時には、弁護士に全く質問をせずに、その山に山小屋があったり、噴火口があったりする山を提出する人もあります。

何度も言いますが、私たちの仕事は弁護士の意向に沿った山を短時間で確実に描けるかというものです。自分の主観は不要です。

ですから、どんなに素晴らしい山を描いても、弁護士の意向に沿っていなければ、使い物にならないのです。

時々、弁護士の意向を全く読み取る気のない人がいます。その人は人一倍頑張っています。ただ、その頑張る方向が弁護士に向いていないのです。では、誰に向いているかというと、自分自身に向いているのです。

自分は仕事ができるんだ!自分には知識があるんだ!弁護士がそれを全く分かってくれない!自分の話を理解してくれない!と不平不満になってしまいます。結局、この職員は自分のことしか考えていないのです。

法律事務所はその中核である弁護士の意向によって成り立ちます。ですから、全ての考え方が弁護士のためという方向に向っているのはあたりまえです。弁護士のため=事務所のため=依頼者のためなのです。残念ながら、職員のためではありません。弁護士が職員のことを理解することはまず無いと言っておきます。では、この職員は自暴自棄になって退職するのか・・それは本人次第です。他人の意向を読み取るということも、りっぱな能力ですので、能力不足として解雇される可能性もあります。特に弁護士事務所では、依頼者をはじめ様々な人の意向を理解しなければなりません。これができない人または、する気がない人はパラリーガルには向いていないのかもしれません。

しかし、対処策が全く無いというわけでもありません。1年間弁護士のためだけを考えて仕事をしてみてください。弁護士のため=事務所のため=依頼者のためという流れが生じてくると、弁護士が少しずつ変わってきます。というより、自分の考え方が変わって弁護士に対する考え方が変わってきます。今までの不平不満が消えます。不思議な現象です。そうなると重責のある仕事をまかされるようになるはずです。そして、弁護士のため=事務所のため=依頼者のため=職員のためという図式が完成します。

自分を理解させる方法は、まず相手を理解するしかありません。どんなに自己アピールしても、それが事務所(弁護士)の意向に沿っていなければ、仕事ができない厄介者になってしまいます。どんなに頑張っても空回りしているだけなのです。

あんな弁護士のためなんていやだ!と思うかもしれませんが、その弁護士が自分を採用してくれたのです。採用通知が来た時のことを思い出して恩返ししてみてはいかがですか。辞めるのはいつでもできますが、借りを作ったままではパラリーガルが廃ります。

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